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「霜止出苗」の時です (4/25-4/29)

二十四節気「穀雨」の次候が、七十二候の「霜止出苗」(しもやみてなえいずる)です。

暦の上での夏まであと10日ほど。朝晩の冷え込みも弱まり、霜が降りなくなります。そうなると、米作りを行っている農家は稲作のシーズンが来たと感じます。地域ごとに気候差があるので一概には言えませんが、この頃には苗代(なわしろ)で苗を育てたり、ビニールハウス内に育苗箱を並べながら、その青々とした力強さに豊作への期待を寄せるものです。

現代のコシヒカリに代表される早場米(はやばまい)は、他の普通米と比べて一か月ほど苗の植え付けも収穫も早いので、この時期にはすでに田植えが終わっている地域も少なくありません。これには米自体の品種改良と育苗の進歩が背景にあり、実は昭和になってからの話です。それ以前は、田植えは初夏の風物詩として梅雨の頃(6月中旬頃)に行われることが多かったようです。

苗が育つには現代の手法で20~25日ほどかかりますが、昔は今ほど諸環境に強いイネではなかったので、種から苗を作るのも一苦労だったはずです。その後、田んぼの一角に作った苗代で我が子のように大切に苗を育て、それを少しずつ手作業で植え替えていったのです。

一方、もともとの中国の宣明暦では、この時期を「鳴鳩払其羽」(めいきゅうそのはねをはらう)と記しています。鳴鳩が何の鳥なのかは諸説あり、カッコウであるとか鳩の一種であるとかハッキリしません。

「其の羽を払う」については、古書では農耕に際して鳥を追い立てる様子だとしていますが、ここでは鳥が羽を振るわせたり、お互いの首周りや羽を突き合ったりして、汚れや小さな虫(寄生虫)を払い落している様子だとイメージしてください。

この「鳩のような鳥」は中程度の大きさで仲が良く、猛禽や水鳥の類ではない種類と考えられており、そうであれば、つがいや群れの仲間同士でお互いのことをケアし合う一面があるではないでしょうか。例えばハトであれば、カワラバト(ドバト)やキジバトが、日本でも見られ「相互羽繕い」をする種だそうです。

お互いに羽繕いすることは繁殖期における求愛行動(愛情表現)の一種だと見られていますが、実は寄生虫を除去しているとの研究もあり、それが結果的に群れの中の健康を保つのにも役立っているのは素敵なことです。愛する相手や家族や友達をケアし、守ろうとするのは鳥も人も同じだというわけですね。

そう思うと、この「霜止出苗」の時期には「相手を思いやること」という隠れた意味合いがあるような気がしてきます。人間に置き換えてみれば、人の痛みを理解したり、同情したり、なんとか力になってあげようとしたり、といったことです。

七十二候は季節の推移や風物詩や旬の物を知るだけのものではなく、実はその言葉の奥に深い意味合いが込められていることが多いのです。それを読み解くことは、かつて自然や宇宙と密着して生きていた人たちの精神的遺産を受け継ぐことになるのではないかと思います。